2015年5月8日金曜日

「農村社会史」とは

大学院の「農村社会史」はすでに3回分の講義が済んでいます。「農村社会史」というなまえの講義が開講されている大学は、多くはありません。なにをやるかということで、最低限決めてあるのは(1)「日本国内」の農村について中心的に扱うということ、(2)「戦後」を中心に、場合によっては「明治以降」の農村と農村研究について扱うということです。

「史」となまえがついているからといってこの講義は「歴史」の勉強をしようというのではありません(私は歴史学の専門家ではありません)。現在の農村部の地域社会を社会学的に理解するための知識を学んでいこう、というものです。社会とは、それがどのような人間集団であれ、歴史をもっています。歴史があるなら、その社会独自の規範があり、そうした規範があるからその社会で特有の行為に対する解釈が成り立つのだ、というのは社会学の講義でも繰り返し述べてきた基本です。

で、農村部というのはとくに歴史が長く厚く、現在の状況を理解する土台として歴史的に成立して来た「構造」なり「規範」なりを知らなくては理解できない。そのための最低限の知識を勉強していこう、というのが目的です。

そんなわけで、手始めに社会学的にムラ(村)を理解するための基本であるイエ(家)という制度について勉強しています。源流は民俗学を始めた柳田國男ですが、その源流から農村社会学の流れを作ったのが有賀喜左衛門、福武直、鈴木榮太郎、喜多野清一といった面々。前回読んだのは福武直が敗戦直後に調査し、出版した書物のなかの論文「東北型農村と西南型農村」でした。
  • 福武 直[1949]「東北型農村と西南型農村」、福武直『日本農村の社会的性格』、東京大学出版会、pp.69-115
タイトルが示す通り、この論文は岩手県と岡山県の農村社会を、イエ制度、とくに本家ー分家制度の「実態」比較に着目して書かれたものです。それまで、日本の農村社会が全国ひとくくりに論じられており、地域別の類型化がすすんでいなかったからです。

そのほか、講義でも解説しましたが、これが書かれた背景には当時のGHQが主導したといわれる農村の「民主化」が問題意識としてあります(論文中にはこれはそれほど明確にはされていませんが)。ちなみに戦後の農村民主化とは、農地改革、農業協同組合事業、生活改善事業3本としました民主化がすすんでいるはずが、実態をみてみると「封建的遺制」つまり封建的な地主-小作制度の残存がみられる、等々がその問題の捉え方です。

この論文の表面である「東西比較」の奥に隠れて一貫しているのは、「実態」をベースに当時の農村社会を理解し、それまで学説が築き上げて来た「型(model)」や民主化という「制度・政策」との差異を問題にする、という議論の作り方=【理念型と実態との差異、制度化と実態との差異から〈社会〉の動きをみる】です。こうした現地調査に基づく事例研究での議論の作り方も、文献を読みながら学んでいってほしいことです。

次回からはムラのなかでの社会関係、相互扶助について勉強しますが、イエについてもっと勉強したい人は以下の文献も読んでみてください。

  • 有賀喜左衛門[1971]「家の歴史」、『有賀喜左衛門著作集(11)―家の歴史・その他』、未来社
  • 鳥越皓之[1993]『家と村の社会学(増補版)』、世界思想社

有賀[1971]のほうは原典(古典)的な文献で、農村地域をフィールドに修士論文を書こうという場合には必読。ちなみにこの「家の歴史」が最初に出版されたのは1965年、調査はさらに古いです。鳥越[1993]はやさしい概説書で、この講義の副読本的な位置づけです。

また、初回でとりあげた以下の論文は「フィールドワークもの」ではありませんが、人口データを使った実証的研究です。書かれている内容もたいへん勉強になりますし、論文の構造自体も分かりやすいので、論文とはこういう展開で書かれるものだ、ということを学ぶためにも何度か読みかえしてみるとよいと思います。

  • 平井晶子[2003]「近世東北農村における『家』の確立ー歴史人口学的分析」、『ソシオロジ』47巻3号、pp.3-18

―というわけで、この講義は歴史の講義ではないけれど、歴史的に成立した規範や制度についても勉強する、歴史的制度を参照しながら現在をみていくんだという説明でした。

この講義では日本のことを中心的に扱うということもあって、英語文献は扱いませんが、さいごに少しだけ英語の勉強を。じつは、講義には英語のなまえもつけられています。でも「history of〜」みたいななまえはつけていません。私の独断で、「Agrarian Studies」となっています(シラバスにも、出てない…)。でも、根拠がないことではありません。米国のYale大学のAgrarian Studiesプログラムのページがそのコンセプトを紹介しています。みじかい英文なので、これをちょっと読んで、イメージしてみてください。

2015年5月7日木曜日

大学院生のみなさんへ

今年度からは、大学院の講義も受け持ちます。2015年度は質的調査分析(前期、オムニバス)、農村社会史(前期)、北東北研究(前期、オムニバス)、地域社会学(後期)です。

大学院生に向けて書いたエントリ記事もときどきあげていきますが、それほど頻度は高くないと思います。ただ、もともと学部学生のために書かれたものでも、大学院生のみなさんにも役立つことはあります。同じ記事に学部のゼミや講義と大学院のラベルが重ねて貼られているのはそういう理由です。

大学院生は、自分で独自の調査をすすめ、成果(修士論文)を仕上げることが最終目標です。この目標を強く意識して、そのために「自分の場合は」どのようなスキルを身につける必要があるか。これをつねに考えて、講義などを自分に引き寄せて利用・消化していってください。

ただ講義を座って受けているだけでは、時間のムダです。できるだけ受講者のみなさんにひろく使える知識やスキルを伝えて行くつもりですが、極端に言えば自分に必要のないところは聞かなくていい。そのためにも自分の最終目標になにが必要かは強く意識すべきでしょう。

最終成果とそこにいたるプロセス開発が、大学院でのみなさんと教員との共同作業なわけですが、ほんとうにやりかたは「それぞれ」なので、みなさんからの積極的な発信がこちらになされるかどうか(そのための勉強が各自できるかどうか)が分かれ目です。がんばってください。

2015年4月27日月曜日

佐々木さんのエントリー・シート

先週金曜の臨時ゼミは、就職2年目、某企業でシーリング材の営業で働いている佐々木さんに、お仕事の話と就活の話をしていただきました。そのなかで、ある企業人から「よくできている」と褒められたことのある、かれが3次面接まで進んだ某お菓子メーカーあてのエントリー・シートをみせてもらいましたが、あれの要点はなんでしょうか。

*  *  *

細かいポイントはいくつもあるのですが、全体的に「ストーリー性」があるということだと思います。具体的に説明します。

シートのなかには複数の項目の作文があります。ここで言うストーリー性とは、それらの各項目で書かれてある内容どうしが、なんとなくそれを書いた人の中でつながって生きていて、かつ、それぞれが書いた人の入社後のビジョンにもつながっていっているな、と読む人が思えるかんじで書かれているということです。

佐々木さんには、特別アピールできる資格はありません。世の中にはもちろんTOEFL、TOEIC、英検とか日商簿記2級とか宅健とか行政書士とか、はては漢字検定とか、いろいろ資格はあります。そういう資格は、もしいま持っているなら、アピールには使えます。でも大事なのは、数ありゃいいというものでもないし、持ってるものを並べるだけではもったいない、ということです。4年生はいまから慌てて資格なんか取ろうとしなくてもいいです(時間かかるし)。

あと、面接の会場では「この資格持ってます」「入社後これができます」みたいなことをやたら押してくる就活生が目立っているかもしれませんが、恐れるに足らず。資格なんか履歴書みたら分かるし、履歴書とかぶることを面接で繰り返すと「こいつ、これしかアピールポイントないのかな」と思われます。「できます」アピールについても、できるかどうかは採る側が判断するので、そんなこと言うだけじゃあ意味ないです。

たとえば、TOEFL500点というのは、それ自体高スコアでもなんでもないのだとしても、大学在学時代のアメリカ自転車旅行の経験があり、将来海外での営業職を志望している、ということだったら、その各要素がつながってひとつの人物像を結ぶわけです。「ああ、優等生タイプじゃないけどやる気と行動力はあるんだな、じゃあ海外勤務も視野に入れているな」とか。

佐々木さんのエントリー・シートの現物をみてみましょう。まず、書き方です。

企業志望の理由とか、その企業でしかできないこととか、これまでに挑戦した困難な目標とその達成法とか。各項目のお題に対して、冒頭の1-3行目で答えを、続いて答えについての説明を書いています。たとえば1行目に志望理由、2行目以降は「なぜなら~」で始まる。これ、みなさんごぞんじのパラグラフ・ライティングですね。全体が徹底してその書き方になっています。企業の人がエントリー・シートを数百枚(場合によっては千枚以上)チェックしていることを考えれば、「なんか読みにくいな」と思われるだけで不利ですし、読みやすくて飛ばし読みでも要点が分かるというのは、まちがいなく有利です。

次に、書いてある内容です。佐々木さんが言っていた「経験は実績」がキーワードです。

目立つところがいくつもありますね。アメリカ大陸自転車横断とか。インカレ団体優勝とか。自己記録更新とか。ちょっと笑うほど「すごい人」にみえます。こういうのをみると、この人はすごい人だから私はこんなの書けません、と結論するかもしれません。でも、面接員側はもっとスレています。「こいつアピールがんばってんなー(笑)」とか「団体優勝や記録更新はキミもそうだけどコーチがよかったんだよね」とか「自転車だけか?バスとかに乗ってないのか?」とか思います。もちろん、悪印象はありません。

重要なのは、すごい達成を書いているという点ではありません。経験にちゃんと意味や説明をつけられているかどうかだけが分かれ目なのです。失敗の経験を書くのだって、いいと思います。その失敗に意味や説明を付けられるということは、失敗を経験していない人・失敗しただけの人に比べて、明らかに経験値が高いからです。

経験は実績です、と佐々木さんは言います。ただし、あなたの経験そのままでは誰が見ても分かる実績にはなりません。(a)その経験が自分にとってどのような意味があった(ある)のかという経験への意味付けをし、(b)それがその企業に入ったときにどう生かせそうなのかというビジョンも少し述べる。これらの(a)(b)2つが書かれていてはじめて経験が「実績」になる。これが書けていることが、いいエントリー・シートの条件なのだと思います。「経験」を「実績&ポテンシャルの根拠」と位置づけて作文する、ということです。そういう実績、ポテンシャルをどう評価してどう使うかということは、採る側が決めます。

エントリー・シートには、履歴書に書いてあることを繰り返したってしかたない。逆に、履歴書に書けていない、書けなかったことを書くべきです。「経験」はその最たるものです。また、経験したことは、自分なりの話し方がやりやすいはずです。面接員の手元にあって質問のネタになるのがエントリー・シート。そこに書かれてある内容を、面接の場で自分で補足することはそんなに難しくはないでしょう。志望理由の模範答案を暗記したかのようなロボット的面接受験者はまったく印象に残りません。それより経験の語り方を工夫してみましょう。

というわけで、エントリー・シートでも面接でも、自分をプレゼンするときに、個別バラバラの経歴・資格等々の羅列よりも、個々の項目で書かれている経験の内容が意味付けされ、仕事のビジョンにも関連づけられた実績・ポテンシャルとして示されていれば、読む人(企業の人)にとって現在の本人(エントリー・シートを書いた人)の将来人物像に焦点が合って、その人への興味を引くかんじになって、いいんです。それが、冒頭で私が言った「ストーリー性」です。

経験を書く、というときに難しい点があります。他の人からは独自の経験にみえ、なんらかの実績の根拠とかあなたのもつポテンシャルと評価できるものでも、自分自身では「みんなやってることだ」「フツーのことでたいしたことない」と思えてしまう点です。これ、その経験に価値がないのではなく、意味付けがまだできていないだけのことです。

たとえば社会行動コースなら、実習とか卒論で、現場で取材していること、インタビューしていることなどは、実はあんまりほかの受験者がやってないことですし、具体的な調査場面のエピソードとか、いろいろ語れるじゃないですか。そういうの、面接で強いです。社会調査士という資格も、面接員には知らない人が多いでしょうけど、そこに食いついて来たら実習や卒論の話をすればOK。ただし面接では、最初は「社会調査」でいいんですが、話を続けていくときに「調査」「フィールド」という漠然としたコトバを連発するより「取材」「インタビュー」「アンケート」「調査した地名」など具体的にやったことがイメージしやすい語を選んで使ったほうが有利(こういう小手先も大事なのです)。

*  *  *


あらためて佐々木さんのエントリー・シートを読むと、自分のことをよくここまでいけしゃあしゃあと褒められるものだ、とも思います(笑)。自分で自分を褒める作文が難しい場合は、私が添削することもできるので、相談してください。ゼミでも言いましたが、私、意外と人を褒めるの得意です。あと、佐々木さんは「笑顔はほんとうに大事っすよ」と言ってました(笑)。

2015年4月15日水曜日

2年目=2015

昨年度後期から始めたこのblogも2年度目に入りました。

今年度も昨年度と同じタイトルの講義を受けもち、その講義でこの予習・復習用blogも紹介しているので、みなさんは講義タイトルのラベルからアクセスして昨年度のエントリー記事を読むことも多いと思います。

毎年講義内容はバージョンアップしていくつもりですが、内容が全面的に変わることはしばらくありません。だからたとえば、今年度の社会学Aの受講者が昨年度のエントリー記事を読んで勉強しても、まったく問題はありません。

もちろん、今年度に新しくエントリーを書き加えるつもりもありますので、学生の皆さんには今年度と昨年度のエントリーをあわせて読んでもらえればと思います。

よろしくお願いします。

2015年3月29日日曜日

ドツボにはまらない心得

4年生のみなさんは、就活(および公務員試験)と卒論という2大プロジェクトを抱えて、これから1年間とても忙しいと思います。どちらも難度のある長期戦なので、キツくならずに、なんとか姿勢をキープして乗り切ってください。就活と卒論、どちらにも共通して言えることで、両立するためにも必要な心得です。

  • スタートラインにうまく立つために、情報の共有を

自分の周りと情報を共有する(とくに初期は)。それで損をすることはない。友だちとはこまめに情報交換する。人から得ようとするだけではなく、人にも教えることのできる情報を用意する。ゼミ生どうしでも。そのうえで独自の活動と工夫をしていく(底上げ効果)。そうするとはりあいもおもしろさもでてくる。個別にやるだけでは効率は悪く不安が大きくなりやすい。

  • スケジュールのマネジメントをしっかりやる

これをやることで、卒論も就活もストレスが大きく減る。説明会、ゼミの発表日など、いろいろ。調整の融通が利きやすいのはゼミの方だが、直前になってというのは勘弁してください。遅くとも1週間前には次の7日間の予定は固めておくこと。なんとなく就活に流されるのはダメ(結果、就活にも卒論にも消耗する)。就活のなかで優先すべき事項とその理由を自分で決める、ということも含めてのスケジュール管理。

  • やりながら身につけていったことをすぐ次の成果につなげる

やりながら少しずつ要領がのみ込めてきてスキルも上がる(経験値の上昇)。自分でそれが分かってくればさらに伸びる。分かるためには、やりながら得たネタや「できるかも」という感触を、すぐ次のゼミ発表や面接などの実戦に生かし、取り入れていく。芸の基本は繰り返し+α。つねにその時点でのものを見せていくしかない。「まだできてない→今回は見送り」はキリがないし、できることが少ないかのような錯覚を呼ぶ。

  • 完璧を意識するのは無駄、調子を落とさず継続する

「自分とのたたかい」を手なづける。完璧を目指すとか、完璧な人を想定して自分を減点評価するのは無駄。自分が落ち込むキッカケを自分で作ることはない。自分の能力や持久力、クセについて、いろんな見積もりと対処ができることがいちばん大事。つまり、自己評価は「安定しているかどうか」だけが問題なのであり、自己評価が高い/低い」はけっこうどちらでもよい。

  • あとは、人と会うこと

基本。卒論でも就活でも、人と会って話すことに積極的になると転がりが早くなる。もちろん時間には限りがあるし、多く会えば会うほどいいということでもない。会うべきとき、会えばいいかもと思ったときに気後れして会わないよりは、会っておいた方が後悔しない。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
〔追記〕
うーん・・・就活というのは、突然3日前に面接の呼び出しがかかったりするんですね。経験のない私は、就活中の4年生のみなさんの話から分かりました(感謝)。上では「遅くとも1週間前に次の7日間の予定を固めろ」と言いましたが、なかなか難しい面もありますね。いずれにしろ、上で言ってることの基本は変わりません。ドツボにハマらぬよう、自分を大事に就活と卒論を。つねに連絡はしてくださいねー。

2015年3月14日土曜日

関連文献紹介の要点(その1)

前回エントリーで、4年生には自分の卒論関連文献の紹介をしてもらう、と書きました。前期ゼミの時間に各自1回やってもらいます。もっと必要な人には「卒業研究」の枠内でやってもらいます。

さて、関連文献の紹介の鉄則です。

  • 1つ紹介の場合でも、それだけしか読んでいないのは絶対ダメ。いくつか読んだなかで、それを選択して紹介する。
  • ひとつのテーマやトピックに対しては、複数の立場や視点の論者がいるはず。そのなかで、選んだ文献が占める位置を把握。だから複数紹介のほうがいい。
  • その文献の主張に対する自分の卒論の位置取りまで示せれば、申し分ない。

さいごまでは無理かもしれませんが、最初はかならず、できる限り2番目まではクリアしてください。

本だけではなく、学術雑誌の論文も、国立情報学研究所のCiini大学図書館の雑誌情報/電子ジャーナル情報などを利用し、さがしてみてください。

関連文献のさがし方については、以下に昨年10月に配布したレジュメ「卒論への道(その3)」の一部を再掲します。

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  • 自分の調査にとってメインの参考文献 → 単著もの指定。新書、論集は除く。先輩の卒論(単著)は、参考文献としても、卒論の過去例としてもとても有用なのでかならず複数チェックする。
  • 単著でも『~入門』『~概論』のような本は、参考書として勉強にはなるが、ここでいう卒論に直結するようなメインの参考文献ではない。(そして、そのような本は最初から最後まで読んではいけない。自分に関係のある章をいくつか吟味して、そこだけ集中的に読むべき。論集の場合も同じ。)
  • 最初の段階では、webで探すよりも、図書館に行って本棚に並んでいる本のなかから探してみる方がラク。(例;まず1冊これかな?というものをwebで探して、図書館でその本の周りにある本とかみてみる。)web検索では適切なキーワードが分かっていないといけない。図書館の本棚はキーワードではなくテーマ、分野、トピックなどでグループ分けしている。
  • 興味ありそうな本なら、①目次、②本文の最初と最後の10ページずつ(つまり序章と最終章)、③本文全体で図表によって示されているデータすべて(写真含む)、の3つは必ずみてみる。それで、自分の調査のヒントがありそうだと思ったら、④巻末の参考文献リストをみて、関連書にどんなものがあるかを調べる(巻末ではなく、各章の終わりにリストが載っていたり、註という形でしか出ていないものもある。参考文献がどこにも示されていない文献はダメ)。→ そして・・・⑤より興味のありそうな章から読んでいく。
  • 世の中にとっては大事な本でも、自分にとっては興味の持てない本、卒論の調査にとっては関係ない本というのはいくらでもある。①~③の途中で、これはまったくちがうな、興味を持てないな、と思ったらひとまずその本は候補から落とす。
  • 10冊くらいについて上の①~③をやっていくと、目次をみただけで、その本全体の内容がなんとなくイメージできるようになっていくので便利。
  • 卒論は調査して書くので、調査して(できれば現地調査)書かれた本でないと、重要参考文献にはならない。文献は、全体をまんべんなく読むのではなく(退屈)、なにが調査対象で、どのような視点で、なにが問題とされ、どのような方法で調査をおこなって、どういうデータのまとめ方をしているか、をチェックする(卒論調査の方針を立てるという目的に沿った読み方)。結論としてなにが書かれているか、よりもどういう手順で論じられているかを読み取ることのほうが大事。
  • 数をみないと当たらない。2-3冊からではなく、50冊から2-3冊選ぶくらいのつもりで。
  • 気になる文献すべてを手に入れたり、図書館や人から借りたりすることはできない。でも先々のために自分でリストは作っておこう。文献リストの作り方は、先輩の卒論のものを参考にする。
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また、論文の読み方についてはここを参照。この場合は、本の読み方もほとんど同じです。

2015年3月3日火曜日

2015年度前期のゼミ

やり方や、やることの細かい点については、初回に決めたいと思いますが、ゼミメンバーのみなさんとこれまでなんとなく話して、決まってきた大枠を確認しておきたいと思います。

  • 3年生、4年生の合同ゼミであること
  • 3年生は、前回エントリーで示したような指定文献の講読
  • 4年生は、(1)自分の卒業研究と関連の深い文献紹介
  • 4年生は、(2)3ヶ月に一度くらい、卒論調査発表
  • 4年生は、(3)3年生の発表にコメント

というかんじです。
だいたい3年生の発表と4年生の発表が半々くらいの割合になるように考えます。発表がなく、私から話をするだけの回もあると思います。

なお;

  • 4年生は、卒論調査をやる場合にはゼミ欠席をみとめる
  • そのかわり、翌週には「卒業研究」の時間に報告する

ゼミの時間帯は、火曜日の14:20-15:50、16:00-17:30の2コマです。時間オーバーしないようにこちらも気をつけます。

このほか、就活についての情報共有とか勉強会のたぐいを、希望があれば4年生主導でやってもいいかもと思っています。たとえばゼミの最後の30分を利用するとか。大学受験と同じで、あるていど情報共有をしておけば不安も減るし、やることがみえてくるかもしれませんので、ほかにそういう場がなければ、そういうのもいいでしょう。

それから;

  • 4年生はゼミのほかに「卒業研究」の時間があります

おもに、やってきた調査報告とこれからの卒論のすすめ方を話し合います。調査報告については、こちらも参照。時間帯は水曜日の14:20-15:50、16:00-17:30の2コマ分ですが、毎週はやりません(その時間を利用して調査をすすめましょう)。いまのところ、前期は隔週でやる予定です。1回に発表する人は3人まで。これも、細かいことはゼミ初回にお話ししましょう。