2017年2月14日火曜日

もし、大学院入学希望(かもしれない)なら

大学卒業後に、就職ではなく大学院に進学するということも、選択肢のひとつです。一般に、人文社会系の大学院は進んでも就職はよくならない、と言われます。目的意識がなければ、そのとおりです。が、ちゃんと自分なりにねらいや戦略があれば、その限りではありません。まず、早めに相談を。4年生の秋以降では、遅いです。

大学院の勉強は特別難しいか。かなり頭がよくなければ大学院はやめたほうがいいのか?そんなことはありません。これは過去に私が学生に言ったことがあるのですが、もっとも必要なのは、社会にまつわるなにかを分かりたいという関心と、それを形(原稿)にしたいという欲と、長期的に取り組む根気ないし根性です。頭の良さなどよりこれらのほうが確実に重要。

大学院(修士課程)の2年間は、案外あっという間です。文献を読んだり、調査をしたり、論文を書いたりということは、どれも時間のかかることです。みなさん卒論に取り組むにも、本気モードになってから最低でも半年はかかったはずです。修論は、その倍以上かかると思ってください。だから、時間やお金・労力のやりくりができることも大事かもしれません。

2017年2月11日土曜日

整理しなおして書き直すとき

卒論・レポートなど、長い文章を書き上げても、なんとなく内容が整理されていないとき、作文の推敲レベルを超えて、もういちど整理しなおして書き直す必要が出てきます。論文形式の文章を整理しなおしながら書き直すときには、パラグラフ・ライティングを意識して構成を組み直すと整理されます。

ひとまず、以前にも挙げた、以下の参考文献の該当箇所に目を通してください(実習室にあります)。

  • 倉島保美『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』講談社ブルーバックス、2012年(pp.26-32)

だいたい、パラグラフ・ライティングについて分かりましたね?では、自分の書いた原稿のファイルを開きましょう。

まず、目次をみます。なんども言っているように、論文にとっての目次はページ数を知らせるためだけのものではなく、構成を示すものです。各章のタイトル、各章内の各節のタイトル。それらをみながら、自分で全体の流れをきちんと他人に対して説明できるでしょうか。

次に、各章には、リード文は書かれていますか?リード文とは、その章に書かれてある内容を要約してある文章で、各章の冒頭1-2段落分をこれにあてます。リード文の内容は、読者にとってわかりやすいでしょうか?各節も同様です。冒頭のリード文でその節で述べることをあらかじめ示します。リード文の役割は、あらかじめ要約を示すことによって、全体のなかのその章、その章のなかのその節の果たす役割を読者に示すことなのです。

この時点で、リード文がこころもとなければ、書き直す作業をしてもよいかもしれません。しかし、卒論の整理されなさは、リード文がしっかりしていないことが原因なのか、その章や節のリード文のあとの中身のほうが整理されていないことが原因なのかは、まだ分かりませんので、リード文をまず直せばいいかどうかは、その先の中身をみてからのほうがよさそうです。

さて。論文全体の構造は、全体>章>節>項となっており、章以下はたとえば、1>1−1>1−1−1などのように表されます。これらより小さな単位がパラグラフと考えればいいでしょう。目次の段階では、節か項のレベルが最小となっており、それ以下の単位は表れていません。なので、論文の内容が整理されていないのは、パラグラフがまだはっきりしていないからではないかということが考えられます。

そこで、以下の作業をやってみましょう。

(1)トピックを探し、パラグラフに分けてみる
(2)パラグラフごとに、パラグラフライティングをすすめる
(3)(2)の作業で、そのパラグラフから除外される文章が出てくるので、それらを章節のなかに再編入する、具体的には別パラグラフを立て、そのなかでの作文を考える

私の考えでは、(1)ができれば、それぞれのパラグラフで扱うトピックは分かっているはずであり、その先にある(3)の工程も想定しておれば、作業自体はすすむのではないかと思います。

これらの作業が難しい場合が出てくるかもしれません。その場合は、その原因を自分で考えてみましょう。

たとえば、

A)そもそもトピックの数が多く(小トピックの乱立状態)、比較的大きいトピックと比較的小さいトピとに分けることに四苦八苦している。しかも、各トピックが小さいためトピ毎の情報量が少なく、パラグラフ・ライティングが適用しにくい。

そういう状態なのかもしれません。それはやはり、自分の頭のなかでKJ法的に、小トピックのカードをまとめた中トピックの島を作り、その島に表札(トピック名)をつけるという作業をしてみることが打開策かもしれないですよね。

B)トピック毎のデータと説明内容はイメージできるのだが、どのような順番で説明をおこなえばいいのか分からない。パラグラフの冒頭にある「要約文」は書けるのだが、その後の複数の説明の文の順番の組み方が分からない。

もしかすると、そういう状態かもしれません。この場合は、要約文の内容と、その後に書かれてある文章にふくまれる情報とに不一致がないかチェックする。不一致のある場合には取捨選択をおこない、メインのものを優先するべき。要約文の内容をよく分析し、ここでは何を優先して書き、優先する情報に附属する情報がなにかという説明の優先順位をはっきりさせる(そして、おそらく要約文の内容自体も補足することになる)。

難しいですか? ならばもういちど、各章のリード文をみなおしてみてください。そしてまず、各章リード文をつなげて読んでみると、卒論全体の展開(流れ)、つまりどんな問い(目的)を立て、そのような着目点で、どのような調査をして、最初の問いに対するどのような着地点を得ているのかが分かるようになっていますか?

もしそれが分かるのだとすれば、全体のなかで各章の果たす役割が、分かるはず。

そうしたら次に、章内の各節の冒頭の段落(リード文)も作りなおしてみましょう。とくに4部構成のうちの「本体」部分については、節レベルまでリード文を作ればいいと思います。各章内の各節のリード文をつなげて読んでみましょう。そうすると、各章全体のなかでの各節の役割もわかるようになるでしょう。

次はパラグラフです。各節内の各パラグラフの冒頭の要約文をつなげて読んでみましょう。そうすると各節全体のなかでの各パラグラフの果たすべき役割がわかるはずです。そこまで分かれば、おそらく各パラ要約文につづく説明の文の順番組みも分かってくるのではないでしょうか。

論文のなかみを整理し直し、書き直すということは、このように全体と部分とを何回も往復してなされるべき作業です。こうした作業をへて出来上がった論文は、強度のあるものになります。


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注記: 念のために言っておくと、ここで言う「パラグラフ」は日本語で言う「段落」とはちがいますからね。この点あいまいな人は上記文献の該当箇所を読み直し。