2018年9月30日日曜日

伝統家族(イエ)と近代家族

近代家族とはなにか。例によって「社会学のつかう概念を憶えるには、その対になる概念とセットで」。近代家族の対となる概念は伝統家族です。両者がどのように区別されるかを説明できればひとまずじゅうぶんでしょう。

前近代の伝統家族から近代家族への変化はどのような変化だと思いますか?この質問、高校生や大学1年生にすると、返ってくる答えは「大家族から核家族への変化」です。その意味するところは「メンバーの人数がコンパクトになった」というていどのものかもしれません。ではなぜ、少人数化したのでしょうか。理由があるはずです。

伝統家族はイエ制度のもとにあります。イエは家業・家財・家系のセットだと考えてください。家業は、農漁業や小商業的なものを想定しましょう。伝統家族は職住一体で、いっしょに働くメンバーといっしょに暮らすメンバーとが同じです。他方、都市化とともに発達した近代家族の典型は、職住分離で、通勤するサラリーマンと専業主婦、その子どもからなる核家族です。

直系制と夫婦制という区別のしかたがあります。伝統家族は直系制をとり、家財・家業を継承するタテのライン--家系--を重視します。家系図を書いて表現するアレですね。一方で近代家族はこのタテのラインへの意識は弱く、継承する家業・家財をもたず一代限りで解散する場合が多いのです。・・・というと、ちょっと大袈裟かもしれませんが、近代家族ではせいぜい顔見知りの親・子・孫の三代が、別居しながらも行き来して親密な関係を保つという程度です。直系制の伝統家族では「ご先祖様」という、直接顔見知りでない人たちともツナガリを意識していたのです。

伝統家族は家業(生産)のための結合集団という性格をもちます。家業の生産性が安定しなかった前近代においては、血縁者以外のメンバーもイエの成員になっていました。その意味で、「直系制」と言われたときわれわれが直観でイメージするのと異なり、伝統家族に血縁主義は比較的弱く、近代家族こそ血縁主義が強いのです。近代家族の結合原理は家族愛、すなわち夫婦間の愛情や親子間の愛情であるといわれます。

また、社会学には定位家族(family of orientation)と生殖家族(family of procreation)という概念があります。定位家族は自分が生まれ育つ家族のことを言い、生殖家族は夫婦が子どもを育てていく家族のことを言います。ある人(ego)は定位家族を選べませんが生殖家族は結婚相手や子どもの数などさまざまなことがその人の選択のもとにあります。

伝統家族はこれらの2つの機能は一体でしたが、近代家族は両者を切り離したといえます。近代家族は職住の分離、そして定位家族と生殖家族との分離ということがその特徴としていえそうです。