2018年11月24日土曜日

公的統計資料・報告書リンク集(その2)

もしかしたら社会学系の卒論に使うかもしれない統計データのリンク先。その1はこちら

2018年11月14日水曜日

卒論企画書(第1期)の執筆要項

1.研究テーマ(15〜20字)Theme of the reseach8-15 words
 卒論のタイトルをイメージしてください。よいタイトルとは、①どんな社会現象(対象)を調べるのか、②それを通してなにを考えたいのか(主題)、の2つが分かりやすく表されているものです。過去の卒論の例を参考にすれば、よいタイトルとそうでないタイトルがどんなものか、分かるかもしれません。
 ただし、それは一発で、かんたんにできるものではありません。最初に仮のものを作っておき、企画書のほかの欄をすべて書いてしまってから、もういちど考え直して作ったもののほうが、よいでしょう。制限字数内で熟考してください。

2.研究テーマの解説(200字程度)Description of the themeNot less than 70 words
 卒論には読者がいます。タイトルを読んだだけでは、研究テーマの意味はすぐに分からないので、テーマを他人に分かるように解きほぐして説明してください。
 研究テーマにとって重要な言葉(キーワード)があれば、それが何を意味しているのかを説明する、どんな社会現象あるいは社会集団(対象)を調べるのか、その社会現象や社会集団(対象)はどのような性質を持っているのか、それを調べることを通してなにを考えたいのか(主題)を説明する、などです。

3.研究テーマの着想の経緯(200字程度)How did you find the concept of this research?
 なぜこの研究テーマで卒論に取り組もうと思ったのか、なぜこの研究テーマに興味をもったのか、自分のこれまでの経験や知識から、きっかけやいきさつを説明してください。例えば実習のなかにきっかけがあったなら、それがどんなきっかけで、なぜ興味をもったのかを説明してください。

4.研究テーマに関する先行研究の紹介および問題点(400字程度)Litarature reviewnot less than 140 words
 自分の研究テーマについて、重要な先行研究(社会学か人類学の論文あるいは書籍)を3点、紹介してください。そのテーマにとってそれらの先行研究がどのように重要なのか、それぞれどのような視点、側面、方法からアプローチしているのかなど、特徴を捉えた紹介をしてください。また、どのような問題点をもっているかということを述べ、そこを自分の研究が克服するのだと言えると、もっとよいでしょう。

5.研究の目的(200字程度)Purpose of the ResearchNot less than 70 words
 研究テーマは大きなものですが、そのすべてをカバーするのは卒論では通常は難しいです。先行研究で明らかになっていることを踏まえながら、自分の研究の目的を絞り込んでください。

6.調査の対象と方法(200字程度)Objects and methods of the researchNot less than 70 words
 研究目的に沿って、妥当と思われる調査対象と方法とを設定してください。なぜその対象で、なぜその方法なのか理由が分かる書き方をしてください。文書調査とインタビュー聞き取り調査、質問票調査とインタビュー聞き取り調査、観察調査と・・・のように2つ以上の方法の組み合わせを推奨します。

7.この研究の社会的あるいは学術的意義(200字程度)Expected social or academic impacts
 研究の結果が、誰にとって、どのように活かしうるのかという社会的意義を書いてください。あるいは、先行研究になかったこういう発見・議論ができるんだ、という学術的意義を書いてください。

8.具体的な調査内容(400字程度)What will be elucidated, and to what extent and how will it be pursuedNot less than 140 words
 先に述べた調査対象・調査方法によって、具体的にどのような調査をおこなうのか、目的のどの部分、どの側面が明らかになるのか、分かるように書いてください。

9.予測しうる結果(300字程度)Expected result of the researchnot less than 70 words
 調査の結果、どのようなことが分かりそうなのか、現時点でイメージできる結果を教えてください。

10.調査のスケジュール(第1期は、2019年01月07日まで) Schedule
 これまでに書いたことに乗っ取って、なにを、いつまでにやるか、が分かる具体的なスケジュールを組んでください。ちなみに、冬休み明けまでに、卒論調査の3分の1〜半分が終わっているという目標です。

2018年11月8日木曜日

コース締切までにやらなければいけないこと

コース締切まであと1ヶ月。それまでに、文章は下手くそでもいいので、卒論をさいごまで書き上げることが、とにかく最優先です。ゼミと卒論面談では、私もその方向でみなさんをサポートします。

コース締切から学部最終締切までの1ヶ月は「書き直しの期間」です。書き直さずに提出できる卒論はありません。書き直しの時間がなければアウトです。というわけで、これから1ヶ月は「書き上げモード」、それから先のさいごの1ヶ月は「書き直しモード」です。

もちろん、なんでも書けばいいというわけではなく、筋を通したものを書いてもらいます。発表会前のゼミでお渡ししたチェックリストがありましたが、あの各ポイントをクリアすることを要求します。以下に一部改訂したバージョンを再掲します。

いちばん時間を割いて頑張るべきなのは調査データを使って書いていく本論部分です。まだ1章分(第3章のみ)の人が多いし、その1章分についても、データをぜんぶ出し切っていない人もいる。

サボらず、がんばって日々作業をすすめてください。作業をすすめない人は、サポートのしようがありません。


1.全体
  • 全体は4部構成、本論部分は2章以上であること。本論が1章だけのものは認めない。章や節のタイトルは、よく考えてつけられていること。
  • 「本論」にあたる章には、かならず各章の冒頭にリード文を載せること。
  • 本論部分の各章(第3章、第4章など)が、それぞれ卒論全体の目的(問い)を部分的あるいは段階的に明らかにしていき、それを最終章でまとめて議論する、という全体構成ができていること。(末尾の全体構造見取り図も参照)
  • 参考文献リストが末尾につけられていること。

2.部分
  • 研究の目的がしっかり書かれているか。タイトルをほぼ繰り返しただけになっていないか。
  • 先行研究レビューはなされているか。
  • 調査方法と調査の対象は、なぜその方法と対象なのかという理由が書かれているか。
  • 本論にあたる章で、データの図表について、説明文はきちんと書かれているか。☞ 図表の解説を作文する
  • 本論にあたる章で、観察事例について、あるいは事例の語り・対話について、説明文はきちんと書かれているか。☞ 事例の解説を作文する

3.細部
  • 章と節の番号が、正しく付けられているか。(節番号が飛んだりしていないか)
  • それぞれの図表や事例には、①表3-1.表3-2....、図3-1.図3-2....、事例3-1.事例3-2....のような番号が順に振ってあるか。また、②それぞれの図表、事例にはタイトルが付けられているか。
  • 段落、文が中途で尻切れになっている箇所がないか(絶対にダメ)。
  • 意味が他人に通じない文章(つながり)、文がないか。
  • 参考文献リストの書式は揃えられているか、順番はきちんと並べられているか。本文中に引用されている文献はひとつ残らずリストに記載されているか。


卒論(論文)は、重要な問題について、社会学・人類学の視点を使って、実証的に(データを使いながら)人を説得していく文章です。データと論理でできている文章です。

文章ヘタクソでも「書き上げモード」で、とにかく一回さいごまで書くのは、自分で自分の卒論全体の論理構造を把握するために必要なのです。いまは、そのためのタイムリミットぎりぎりです。前回ゼミで配った卒論の全体構造についての見取り図も、再掲します。


2018年10月9日火曜日

地域社会学 2018

2018年度の地域社会学(院)は、以下のようなことを勉強します。基本テーマは「移動」です。
  • 近代が可能にした地域移動、社会移動は・・・
  • ・・・政治経済のあり方とどう関係してきたか
  • ・・・地域社会や家族とはどう関係してきたか
  • ・・・しごと、労働、働き方とはどう関係してきたか
  • これからの移動の傾向と地域社会・家族との関係はどのようなものになるか

シラバスにあるとおり、論文6-7本分ほどの内容を基礎知識とともに平易に噛み砕きながら学び、そこから議論する力、まとめて書く力をつけていきます。

知識をインプットするだけじゃなく、議論したり書いたりのアウトプットをしていくと身に付いたものになります。「書く」ほうは、4−5回、講義での議論の内容に関係した小レポート(A4紙1〜2枚)を出します。

労働法を専門にしている受講者の方が2人いらっしゃるので、その知見も活かしていただいて議論が発展すればいいなあと思っています。よろしくお願いします。

2018年9月30日日曜日

伝統家族(イエ)と近代家族

近代家族とはなにか。例によって「社会学のつかう概念を憶えるには、その対になる概念とセットで」。近代家族の対となる概念は伝統家族です。両者がどのように区別されるかを説明できればひとまずじゅうぶんでしょう。

前近代の伝統家族から近代家族への変化はどのような変化だと思いますか?この質問、高校生や大学1年生にすると、返ってくる答えは「大家族から核家族への変化」です。その意味するところは「メンバーの人数がコンパクトになった」というていどのものかもしれません。ではなぜ、少人数化したのでしょうか。理由があるはずです。

伝統家族はイエ制度のもとにあります。イエは家業・家財・家系のセットだと考えてください。家業は、農漁業や小商業的なものを想定しましょう。伝統家族は職住一体で、いっしょに働くメンバーといっしょに暮らすメンバーとが同じです。他方、都市化とともに発達した近代家族の典型は、職住分離で、通勤するサラリーマンと専業主婦、その子どもからなる核家族です。

直系制と夫婦制という区別のしかたがあります。伝統家族は直系制をとり、家財・家業を継承するタテのライン--家系--を重視します。家系図を書いて表現するアレですね。一方で近代家族はこのタテのラインへの意識は弱く、継承する家業・家財をもたず一代限りで解散する場合が多いのです。・・・というと、ちょっと大袈裟かもしれませんが、近代家族ではせいぜい顔見知りの親・子・孫の三代が、別居しながらも行き来して親密な関係を保つという程度です。直系制の伝統家族では「ご先祖様」という、直接顔見知りでない人たちともツナガリを意識していたのです。

伝統家族は家業(生産)のための結合集団という性格をもちます。家業の生産性が安定しなかった前近代においては、血縁者以外のメンバーもイエの成員になっていました。その意味で、「直系制」と言われたときわれわれが直観でイメージするのと異なり、伝統家族に血縁主義は比較的弱く、近代家族こそ血縁主義が強いのです。近代家族の結合原理は家族愛、すなわち夫婦間の愛情や親子間の愛情であるといわれます。

また、社会学には定位家族(family of orientation)と生殖家族(family of procreation)という概念があります。定位家族は自分が生まれ育つ家族のことを言い、生殖家族は夫婦が子どもを育てていく家族のことを言います。ある人(ego)は定位家族を選べませんが生殖家族は結婚相手や子どもの数などさまざまなことがその人の選択のもとにあります。

伝統家族はこれらの2つの機能は一体でしたが、近代家族は両者を切り離したといえます。近代家族は職住の分離、そして定位家族と生殖家族との分離ということがその特徴としていえそうです。

2018年5月28日月曜日

卒論構想発表会レジュメ 条件チェック

構想発表は、指導教員やゼミ生以外から意見やアドバイスをもらう場。自分のやろうとしている調査の目的や、これまでの調査でわかったことを的確に理解してもらわないと、使えるアドバイスはもらえない。

1.はじめに
  • 研究関心を自分の言葉で説明している、あるいは、この研究の着想に至った経緯が書かれている
  • 研究テーマ(社会現象)について、世の中で起きているどのようなことなのか、それをみていくことを通してなにを考えることになるのか、かみくだいて説明がある
  • 研究テーマについて、これまでにどのような研究があったかが紹介されている(先行研究レビュー)
  • 研究テーマについて、自分の仮説が書かれている
  • 仮説についての予測される答えのようなものも、記されている
  • 研究の目的が書かれている

2.対象と方法
  • なぜその人たちを調査対象とするのか、テーマや目的と関連させた説明がある
  • なぜその方法を選んだのか、テーマや目的と関連させた説明がある

3.本論(データの説明)
  • ここ(この章)で使ういくつかのデータが、どんな目的で取られたデータなのか、その調査の目的(小目的)が書かれている
  • その小目的と、研究全体の大目的(1.はじめに)との関係が書かれている
  • それぞれのデータ(図表や事例)が、なにを説明するためのものか、書かれている
  • 図表については、別紙「図表の解説を作文する」の条件を満たしている
  • 事例については、別紙「事例の解説を作文する」の条件を満たしている
  • いくつかのデータを説明したあと、小目的と照らし合わせて分かったこと、および予測していたことと違った結果についての考察が書かれている

4.これから先の調査予定
  • 1.で示された目的全体と、3.のこれまでの調査で分かった部分があり、残った明らかにすべきどのような部分が、この調査で分かる、という説明になっているか
  • スケジューリングは妥当か

参考文献リスト
  • 卒論集に倣った書き方にしてあるか

2018年4月6日金曜日

大学院生のみなさんへ 2018

研究の相談(主査・副査)については、以下を踏まえてください。

  • 相談内容は、約15分で説明できるようにしておいてください。面談全体は基本的に最大60分間だと考えましょう。
  • 面談の終わりには、5分間、今回面談内容のまとめ、次の面談までになにをやってくるか、などを確認するクセをつけましょう。
  • こちらからの呼び出しは、緊急のとき以外は基本的にしません。みなさんのほうで3日前までにアポを取ってください。このときに面談内容をあらかじめ「***について」と知らせてくださると(あるいは事前に添付ファイルでレジュメを送ってくださると)より効率よい面談ができるでしょう。

主査担当の方の「特別研究」面談についても、上に準じます。(ただし、時間は90分間です。)

2018年4月2日月曜日

2018 農村社会史:参考文献

2018年度前期の院「地域社会学」の参考文献です。02〜13それぞれの数字は講義回をあらわし、それぞれの講義回での主な文献をしめしています。

02
NAKANE Chie[1967]Kinship and Economic Organization in Rural Japan.(London School of Economics Monographs on Social Anthropology No.32)The Athlone Press. chap. 3 ‘Analysis of local corporate groups within a village’, pp.82-149.

鳥越皓之[1993]『家と村の社会学(増補版)』、世界思想社 第Ⅰ章1節「家と構成員」、pp.3-25.

03
福武直[1949]『日本農村の社会的性格』東京大学出版会 第二部第一章「東北型農村と西南型農村」、pp.67-115

04
佐藤(粒来)香[2004]『社会移動の歴史社会学:生業/職業/学校』、東洋館出版社 第6章「都市-農村関係の変容」、pp.187-248

05
安場保吉・猪木武徳 編[1989]『高度成長(日本経済史 8)』、岩波書店 第6章(安場保吉)「歴史のなかの高度成長」、pp.273-309.

06
佐藤(粒来)香[2004]『社会移動の歴史社会学:生業/職業/学校』、東洋館出版社 第2章2節「日本の〈移動〉研究」、pp.38-55.

07.
佐藤(粒来)香[2004]『社会移動の歴史社会学:生業/職業/学校』、東洋館出版社 第3章2節「農村から「職業の世界」へ」、pp.77-90.

09-10
見田宗介[1979]『現代社会の社会意識』、弘文堂 「まなざしの地獄:現代社会の実存構造」、pp.1-57.

11-12
奥井亜紗子[2011]『農村-都市移動と家族変動の歴史社会学』、晃洋書房 第3章「戦後移動エネルギーの蓄積:中農層の教育熱」、pp.101-114.

13.
日本村落社会学会編[2000]『日本農村の「20世紀システム」生産力主義を超えて(年報 村落社会研究36)』、農山漁村文化協会 (川手督也)「農村生活の変貌と20世紀システム:新しい変革主体としての女性の登場と家族・地域社会の変容」、pp.118-149.

恩田守雄[2006]『互助社会論:ユイ、モヤイ、テツダイの民俗社会学』、世界思想社 第3章3(2)明治以降の互助組織の変遷:近代から現代へ(3)「現代の互助組織とボランティア社会」、pp.216-237.