2017年7月10日月曜日

後期近代とは

例によって「社会学のつかう概念を憶えるには、その対になる概念とセットで」。後期近代はもちろん前期近代と対になる概念。近代(modernity)とか近代化(modernization)がなにかは、ここでは省略。自分で勉強しましょう。

講義でよく言っているのは、工業化(第2次産業)が近代化を牽引していたのが前期近代。それから先は高度消費社会で第3次産業が隆盛する後期近代。目安としては、日本での戦後の高度経済成長期、あれまでは前期近代で、そのあと、バブルを経て現在の成熟と停滞までは後期近代。高度経済成長は、一般に戦後10年の1955年から第1次石油危機の1973年まで。

そうすると、年表の何年から何年までが後期近代かという「正解」を知ろうとする人がいる。調べてみると別の説があって、前期は1980年ごろまでと書いているものもあります、と言う人もいた(こういうことを自分で調べているのはすばらしい)。言う通り、諸説あるかもしれない。何年から何年までというのはあくまで目安だ。第1次産業が牽引するのが前期近代、第3次産業が主になり高度消費社会が実現して以降が後期近代で、前期と後期とで産業構造や社会のモードが変わったのだ、というのが私の説明のもっともコアな部分だから、これを受け取ってほしい。

工業化によって牽引された前期近代の大量生産体制は、社会全体の編成に影響を及ぼした。米国の自動車メーカーの確立した生産体制をもとにグラムシ(Antonio Gramsci)はこれをフォーディズムと呼んだ。しかし、高度消費社会に入って消費者の選好・嗜好の多様化と、それを煽る諸商品の差別化・ブランド化は相互作用で進んでいく。これがポスト・フォーディズムと呼ばれる生産体制だ。旧来の生産体制では実現できない、多種少量生産という新たな体制が求められたわけだ。

以上は、生産体制や消費についてフォーカスした整理だ。別の要点を重く見た整理もある。たとえばギデンズ(Anthony Giddens)が言うには、後期近代は近代の特性である再帰性がさらに徹底された。またベック(Ulrich Beck)は、後期近代に入るとそれまでの産業社会・科学技術と自然との関係が根本的に変化し、不可避で制御不能なのリスクが発生すること、そして基本的に手に負えないにも関わらずリスクの配分に政治が関わることになるリスク社会が到来する、と述べた。このふたりは、後期近代を論ずる代表的な現代の社会学者だ。