2015年6月3日水曜日

パラグラフ・ライティングには二重・三重の利得がある

昨日のゼミでは卒論の出来上がり(全体20,000字程度)までの工程イメージを伝えました。どこでなんのために頭を使うか、時間がどこでどれだけかかるかを考えましょう。早く取りかかれば取りかかるほど、見積もりが立つようになります。

論文は構成重視。基本は以下の4部構成です。

A. 序論(はじめに)
B. 対象・目的・方法
C. 本論
D. 議論と結論

それぞれの内容がどのようなものかは、昨日のレジュメを参照。それらの内容をどうやって書き進めればいいかは、レジュメを参考にしながら、その都度の面談で、やるべき個別作業に落とし込んでいけばいいのです。ただ、最初の段階では試行錯誤が必要で、現在の4年生はまだその段階です。

C.部分の素材は調査データなので、これからさらに調査がすすみ、ノーツが蓄積されるにつれてできていきます。

すでに調査データが少しずつ蓄積されている人は、A.を作っていきます。やみくもに調査するだけではその先になにがあるのかが分からないので徒労感を感じます。A.部分は調査の方針、調査の先になにを分かろうとしているのか、という全体像を示すものです。

B.部分はA.とC.ができてきたら自動的にできます。
D.部分を作るのは直前期(中間発表前の10月後半)でいい。

これから夏休み前までにA.〜C.部分をどんどん試作していきます。ぼろぼろでもいいので、まずA.〜C.の試作版を作り、そこから徐々に全体を仕上げていきます。書かなくてはなにも始まりません。書かないと考えていることになりません。

A.から順番にD.まで仕上げていく、ということはありえません。それぞれのパーツが並行して徐々に出来上がっていきます。C.のデータがなくてはA.の全体像・全体方針は立ち上がってこず、逆にA.の全体像・全体方針がスカスカでは調査の方向がみえず、というように各パートは別パートとの相互関係で育っていくからです。

原稿を書くときに注意するべきは、パラグラフ・ライティングを徹底することです。パラグラフ・ライティングが重要なのは、2つの意味においてです。第1は、構成していくときに有利だということ、第2に文章の書き直しが少なくてすむということ。これによって、卒論完成までの所要時間が2/3〜半分くらいになります。

パラグラフ・ライティングがなにかはwebで調べてもわかりますし、参考書が知りたければ教えます。勉強して知るだけではなく、必ず実践してください。

また、卒論だけではなく、論理的な構成で、誰が読んでも分かる文章を書く技術は、どんな事務仕事にも使えます。エントリー・シートにも。だから、パラグラフ・ライティングには二重・三重の利得があるのです。


llllllllllllll
【追記】
パラグラフ・ライティングの基礎については、6月9日のゼミで、以下の文献の該当ページ紹介によって説明しました。

  • 倉島保美『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』講談社ブルーバックス、2012年(pp.26-32)