文献の検索、文献の勉強のしかたについては、過去にも述べました。こことか。
今回の講義でした話は、それと重なる部分もありますけど、そもそも文献レビューはなんのためにあるのか分かっていない人も多く、それでは論文を読むときにも書くときにも差し支えあるので、どういうことなのか分かってもらうためにお話ししました。
論文の基本構成(フォーマット)は把握していると思います。研究目的、対象と方法、本論、考察と課題、の4部構成だというアレです。研究テーマと、研究目的とはちがいます。前に研究目的とはなにか、についても書きましたが、あれだけだとかんちがいする人も出てきました。研究テーマと研究目的とをまったく同一のものと捉える、というかんちがいです。
そのかんちがいでなにが困るのか。あなたのテーマが「教育による社会移動のアスピレーション形成」だとします。私が「では、研究目的は?」と聞くと「はい、教育による社会移動のアスピレーション形成について明らかにすることです」と答える、こういうやりとりにあらわれます。問答になっていません。
研究テーマ = 研究目的、ではなく、研究テーマ > 研究目的、なのです。つまり、研究目的は、研究テーマのなかでもなにをどのように明らかにするか、さらに具体的に絞り込んでいなければなりません。先行研究レビューは、テーマを目的まで絞り込むためにあります。以下、具体的に説明します。
テーマは多少の大きさを持っておいてもいいのですが(但し「環境問題について」などデカすぎるものはダメ)、実際に自分で調査して、あつめた情報を整理して分析するとなると、現実問題(予算、時間、労力)からすべてをカバーすることはできないはずです。だから研究目的は、調査の実現性という事情から絞り込まれる面がないわけではありません。しかしただできない調査を消し、できることだけでやる、という安易な目的の絞り込みだけでは、「その目的にどんな意味があるのか」と問われたときに、あなたの事情を話すだけになってしまい、とても説得力が弱い(同情を買うしかない)。
そこで、研究目的の妥当な絞り込み方を考えなければいけない。そのテーマのもとには、いろいろなサブ・テーマ要素が考えられるはず。これを思いつく限り書き出す。また、そのテーマで調査をするとすれば、対象や方法としていくつかのものが考えられるはず。それらも書き出す。そうして書き出されたものたちが、あなたの研究をどうすすめるかの具体的な選択肢です。サブ・テーマにせよ対象や方法にせよ、意識的に、妥当なものを選び、それらが妥当であるという道筋を示さなければ論文は説得的になりません。
関連文献をさがします。それぞれの関連文献は、あなたの書き出したサブ・テーマやアプローチ、対象・方法のなかのどれかを採っているか、あなたの想定していなかった選択肢を採っているかでしょう。
ところで、あなたは自分のテーマ(タイトルになるようなもの)やサブ・テーマについて、どのような視点で、どのような関心を持っているか、コトバで説明できますか?論文を構想している段階では、それはまだうまくコトバになっていないことがほとんどです。
探し当てた関連文献をひとつひとつチェックしていきながら、自分の関心に近いと思えるものや、自分のイメージしていたのとはまったく別の視点からアプローチするものなどがみえてくるでしょう。このときに「受け身の勉強」つまり自分を無にして内容を理解する・覚える、という態度では文献に呑まれて終わります。自分の関心を捕まえる、という意識で読む。自分の関心を、他人(文献)との比較で相対化・客観化して把握することを目指すのです。
そういう地道な作業が先行研究レビューの第1歩です。そうすると、さきほどの「選択肢」のなかで自分の採るべき途も見えてきます。人がすでに研究したものは避ける、という選択もいいですし、人もすでにやっているが、しかしそれを自分はちがった方法でやる、などと、同じサブ・テーマを別の角度から深めていくという選択でもいいと思います。
複数の先行研究を読み進めていくうちに(少なくとも3〜5は読まないとダメです)、自分の書き出した箇条書きが再整理されていくことになるでしょう。自分がやみくもに書き出した箇条書きのどれにどの文献が入る、という単純な仕分けだけでは整理とはいえない。人に説明するための文章を作文するのですから。
基本的に、ひとつのテーマあるいはサブ・テーマについて、アプローチの違いからA対B、あるいはA、B、C・・・の異なるアプローチがある、というように整理できるはず(言うまでもなく1つしか読んでいないとこれはムリ)。このうち自分はどれに近いか、どれをどのような対象と方法とで深堀したいか、それはなぜか。
そのようにして、自分の関心を人との比較で相対化する、ということを、頭のなかでやるだけではなく文章として整理して書くと、レビューになるのです。学部生ではやや難しいけど卒論では避けて通れないし、大学院生はこれをできなきゃいけません。
箇条書きでまとめます。
今回の講義でした話は、それと重なる部分もありますけど、そもそも文献レビューはなんのためにあるのか分かっていない人も多く、それでは論文を読むときにも書くときにも差し支えあるので、どういうことなのか分かってもらうためにお話ししました。
論文の基本構成(フォーマット)は把握していると思います。研究目的、対象と方法、本論、考察と課題、の4部構成だというアレです。研究テーマと、研究目的とはちがいます。前に研究目的とはなにか、についても書きましたが、あれだけだとかんちがいする人も出てきました。研究テーマと研究目的とをまったく同一のものと捉える、というかんちがいです。
そのかんちがいでなにが困るのか。あなたのテーマが「教育による社会移動のアスピレーション形成」だとします。私が「では、研究目的は?」と聞くと「はい、教育による社会移動のアスピレーション形成について明らかにすることです」と答える、こういうやりとりにあらわれます。問答になっていません。
研究テーマ = 研究目的、ではなく、研究テーマ > 研究目的、なのです。つまり、研究目的は、研究テーマのなかでもなにをどのように明らかにするか、さらに具体的に絞り込んでいなければなりません。先行研究レビューは、テーマを目的まで絞り込むためにあります。以下、具体的に説明します。
テーマは多少の大きさを持っておいてもいいのですが(但し「環境問題について」などデカすぎるものはダメ)、実際に自分で調査して、あつめた情報を整理して分析するとなると、現実問題(予算、時間、労力)からすべてをカバーすることはできないはずです。だから研究目的は、調査の実現性という事情から絞り込まれる面がないわけではありません。しかしただできない調査を消し、できることだけでやる、という安易な目的の絞り込みだけでは、「その目的にどんな意味があるのか」と問われたときに、あなたの事情を話すだけになってしまい、とても説得力が弱い(同情を買うしかない)。
そこで、研究目的の妥当な絞り込み方を考えなければいけない。そのテーマのもとには、いろいろなサブ・テーマ要素が考えられるはず。これを思いつく限り書き出す。また、そのテーマで調査をするとすれば、対象や方法としていくつかのものが考えられるはず。それらも書き出す。そうして書き出されたものたちが、あなたの研究をどうすすめるかの具体的な選択肢です。サブ・テーマにせよ対象や方法にせよ、意識的に、妥当なものを選び、それらが妥当であるという道筋を示さなければ論文は説得的になりません。
関連文献をさがします。それぞれの関連文献は、あなたの書き出したサブ・テーマやアプローチ、対象・方法のなかのどれかを採っているか、あなたの想定していなかった選択肢を採っているかでしょう。
ところで、あなたは自分のテーマ(タイトルになるようなもの)やサブ・テーマについて、どのような視点で、どのような関心を持っているか、コトバで説明できますか?論文を構想している段階では、それはまだうまくコトバになっていないことがほとんどです。
探し当てた関連文献をひとつひとつチェックしていきながら、自分の関心に近いと思えるものや、自分のイメージしていたのとはまったく別の視点からアプローチするものなどがみえてくるでしょう。このときに「受け身の勉強」つまり自分を無にして内容を理解する・覚える、という態度では文献に呑まれて終わります。自分の関心を捕まえる、という意識で読む。自分の関心を、他人(文献)との比較で相対化・客観化して把握することを目指すのです。
そういう地道な作業が先行研究レビューの第1歩です。そうすると、さきほどの「選択肢」のなかで自分の採るべき途も見えてきます。人がすでに研究したものは避ける、という選択もいいですし、人もすでにやっているが、しかしそれを自分はちがった方法でやる、などと、同じサブ・テーマを別の角度から深めていくという選択でもいいと思います。
複数の先行研究を読み進めていくうちに(少なくとも3〜5は読まないとダメです)、自分の書き出した箇条書きが再整理されていくことになるでしょう。自分がやみくもに書き出した箇条書きのどれにどの文献が入る、という単純な仕分けだけでは整理とはいえない。人に説明するための文章を作文するのですから。
基本的に、ひとつのテーマあるいはサブ・テーマについて、アプローチの違いからA対B、あるいはA、B、C・・・の異なるアプローチがある、というように整理できるはず(言うまでもなく1つしか読んでいないとこれはムリ)。このうち自分はどれに近いか、どれをどのような対象と方法とで深堀したいか、それはなぜか。
そのようにして、自分の関心を人との比較で相対化する、ということを、頭のなかでやるだけではなく文章として整理して書くと、レビューになるのです。学部生ではやや難しいけど卒論では避けて通れないし、大学院生はこれをできなきゃいけません。
箇条書きでまとめます。
- 研究テーマ > 研究目的
- 研究テーマを、より具体的な研究目的に絞り込む理由付けが先行研究レビューだ
- 研究テーマは、サブ・テーマに分割したものを箇条書きで書き出す
- 同じテーマやサブ・テーマでちがった対象や方法を採ることを想定し、書き出す
- そうしてできた選択肢のなかから自分が採るべき途を決めるために関連文献をさがす
- 関連文献をチェックしながら、自分の関心をコトバ化、文章化していく
- その過程で、テーマやサブテーマについてこれまでどのようなアプローチが採られて来たかを整理する
- 以上の作業を通して、選択肢を絞り込んでいく。その絞り込みかたの妥当性が「先行研究レビュー」として示されるものとなる
以上は、論文を「書く」ときの参考に、だけでなく、「読む」ときの参考にもしてください・・・「書く」人の目線で論文を読みましょう。