プレゼン、スピーチへの質問・コメントを上手く活かし切る人は多くありません。もったいない。
1.そもそも質問・コメントとは
大前提ですが、質問・コメントは自分の研究をよくしていくために活かすものです。「その場で答えたり、お礼を言えたりすればOK」というものではありません。かんちがいしないように。
また、質問・コメントされた内容の意味がわからない場合、そこからなにも生まれません。わからない場合は意味を聞き返したりして、把握する必要があります。時間を浪費しないように。
ところが、質問・コメントをしてくれた相手の「意図」がわからない場合があります。そこまでは質疑応答の時間内でたしかめることは難しい。その場合は、あとでその人に直接1 on 1で聞くことや、ゼミでの確認をするといい。この先で役立つ多くの有用なやりとりができるはずです。
あなたの研究にとって質問・コメントは、その「意図」をめぐってやりとりすることにもっとも重要な意味があります。
2.質問・コメントを整理しよう
各々異なる角度からのすべてを受け止めて活かしていくことはできません。下手をすれば自分の研究の方向を見失ってしまいます。ここではどのように整理すべきかのヒントを示します。
以下のような質問・コメントは真剣に受け止めていく価値があります。(1)すれちがいタイプ、(2)答え合わせタイプ、(3)盲点指摘タイプ、です。
(1)すれちがいタイプ
質問・コメントの内容が、あなたの研究テーマや研究目的からズレている質問・コメントです。相手が教員(プロの研究者)の場合、基本的にはあなたの研究テーマや研究目的の伝え方がうまくいっていないことを示しています。【研究テーマの解説→関連する先行研究レビュー→研究目的】の部分を考え直し、よりていねい・的確に伝わるように組み立て直す必要があります。質問・コメントの内容そのものは、「なぜ、そのような理解のズレを生んでしまったのか」を考える材料であって、直接のアドバイスとは関係なしと判断すべきです。
(2)答え合わせタイプ
研究テーマや目的も相手によく理解してもらえていたうえで、現時点で抱えている問題点や、これからおこなうべき調査など、自分が課題として意識していたことを指摘された場合です。この場合は、自分の考え方が妥当だったんだな、という答え合わせができたということですから、自分が思った方向で研究を組み立てていっていいわけです。研究テーマや目的も相手によく理解してもらえているわけですから、追加の質問・アドバイスをもらいにいくとさらにいいかもしれません。
(3)盲点指摘タイプ
研究テーマや目的も相手によく理解してもらえていたうえで、自分が気づいていなかった弱点、つまりデータ整理や事例解釈のしかたや調査方法、これからの調査内容について考えが至っていなかった点についてアドバイスをもらえている場合です。これは今後の作業におおいに活かすことができます。たとえば、今回のスピーチで説明を省いた箇所が、研究全体でどのような重要な位置を占めているのか、これからの調査でなにに着目して調べていけばいいのか、などの理解へのヒントになります。経験を積んだプロの研究者の洞察で、自分自身が見えていなかった研究の意義や視点を教えてもらえたということです。
以上のようなプレゼン・スピーチに対する質問・コメントの受け止め方・活かし方は、卒業研究だけでなく、将来的にもすべての発表内容のバージョンアップのときに参考になるものだと思います。
そもそも、(1)(2)(3)のような整理ができる水準に達するまでには努力と慣れが必要ですが、それはいくらでもゼミで補ってください。